SM(エスエム)は、サディズム(加虐嗜好)
およびマゾヒズム(被虐嗜好)的な性的嗜好に基づいて行われる倒錯的プレイ全般、ないし同プレイを含む文化様式(サブカルチャー)群の総称である。加虐被虐性愛(かぎゃくひぎゃくせいあい)とも言う。
「SM」は、加虐嗜好の「サディズム」(sadism) と被虐嗜好の「マゾヒズム」 (masochism) を組み合わせたサドマゾキズム (sadomasochism) の略語。加虐嗜好者のことを「サディスト」(sadist) あるいは単に「S」、被虐嗜好者のことを「マゾヒスト」(masochist) あるいは単に「M」という。
精神医学面での「性的サディズム」などでは、性的興奮を得るために一方的に何かを虐待するという性格異常を発揮し、一方の「性的マゾヒズム」では辱めを受けたり自らの肉体を損傷する(自傷行為)ことで性的興奮を得るとされる。ただこれらは、性的倒錯(パラフィリア)と呼ばれる精神障害である。
ボンデージなどといったファッションスタイルも見られる。日本では「緊縛」と呼ばれる縄で縛り付ける行為も見られ、この緊縛にも「緊縛師」と呼ばれる専門家が存在する。「ソフトSM」と呼ばれる行為では「手を(軽く)縛る」や「目隠しをする」といったプレイも見られる。
なお性的サディズムの傾向はドメスティックバイオレンス(DV:配偶者からの暴力)という状況も発生させうるが、いわゆる性風俗におけるSMでは双方同意のうえで「叩いたり、叩かれたり」といった行為が行われ、また深刻な負傷を発生させないよう抑制された暴力または工夫された擬似的暴力であるといった相違がある。その一方で、「ハードSM」と呼ばれるものでは「鞭打ち」や「ロウソク責め」、性器ピアスを取り付けるなどのプレイの分野もある。
SMは原則としては性的ロールプレイのうち、支配者と被支配者に役割を分けて行われる性行為に分類され、ロールプレイのスタイルにより本稿で扱われるS&MのほかにB&D(拘束と支配 Bondage & Dominance、又は訓練 Discipline)や、D&S(支配と服従 Dominance & Submission)などに細別されるが、どのプレイスタイルにおいても本稿におけるSの立場の人間はトップ、Mの立場の人間はボトムとして総称される。
あくまでもSMはトップとボトムの間に信頼関係を前提としているロールプレイである。ボトムはプレイ中にトップの気分を高揚させる目的で「痛い」「やめて」などの悲鳴を発することが多い。しかしプレイ中、ボトムに心身の異常が発生した場合には中断の意思をトップに伝える必要がある。生命に関わる事故を未然に防ぐ為、セーフワードと呼ばれる合言葉をプレイ前に設定しておくことが推奨されている[2]。
また、セーフワードは稀にトップがボトムに対して用いるケースもある。責めに対するボトムの異常な反応に対してどう対処してよいかわからない場合や、プレイが長時間に及び責める体力や気力が尽きた場合などにトップ側からプレイを中断する目的でも使用される[2]。
セーフワードは欧米圏では「Yellow」と「Red」の二つの単語が用いられることが多く、前者は「少しきついので責めを弱くしてほしいが、プレイは続行してもよい」、後者は「異常事態なので直ちに中断してほしい」という意味で解釈される。また、世界的な共通事項として「セーフワード」という単語を叫ぶことは、それ自体がセーフワードとしての効力を有するとされる。セーフワードはトップとボトムの合意事項でどのような単語を定めてもよいため、プレイ中の誤認を防ぐ目的で、その時のプレイ内容とは何ら関係のない単語を設定することも行われる[2]。
プレイ内容により、猿轡を用いるなどしてボトム側が言語能力を制限されている場合には、首を横に何度も振る、タップアウトする、SOSなどの規則的な叫びを何度も発するなどの方法が用いられる場合があり、拘束具や緊縛プレイなどで身体的なジェスチャーが困難な場合には、予めボトムの手にハンカチなどを握らせておき、ボトムの手からハンカチが落ちた場合には何らかの異常事態が発生したと判断する方法もある。どのような方法を用いる場合でも、トップがボトムのセーフワードを認知した場合には、直ちに全てのプレイを中断すること、ボトムがトップのセーフワードを認知した場合にはプレイの中断を果断なく受け入れることが、SMにおける最低限のルールであり、これを承知しないパートナーとはプレイを行うことは望ましくないとされている[2]。
セーフワードはSMにおける最後の安全装置の役割を果たす為、それを設定することによりプレイがつまらなくなるかもしれないという懸念がある一方で、パートナー同士の互いの限界を見極める鍵となる要素にもなる為、パートナー同士がより高度なプレイに発展する為には、ボトムがセーフワードを使うまで容赦なく責めを強化してもよいと解釈しうる場合もある。また、パートナー同士が極めて高い信頼関係と深い経験を有する場合には、敢えてセーフワードを設定せずプレイに及ぶエッジプレイと呼ばれるスタイルを敢行する場合もある。




